大型犬を飼われる方が少なくなっている昨今では、大型犬のブリーダーさんも少なくなっています。
その理由は2つあります。
第一に。
大型犬の中には血統が日本に少ない犬種がいます。
そうなると常に新たな血統を輸入しなければなりません。
こだわればこだわるほど、稀少であれば稀少であるほど、新たな血統の輸入は難しくなります。
今は以前と違い輸入の法律が大変厳しいです。
その規制をクリアするためには多くの資金だけではなく、言葉の問題、そして何よりも輸出先のブリーダーさんとの連携が大切です。
第二に。
一般的に小型犬の方が飼いやすい、という情報が流れ小型犬が人気となり大型犬は敬遠されることが多くなりました。
これは正しい情報ではありません。
しかし実際に大型犬に魅力を感じていても、誤った情報を信じて総合的に判断した気持ちになってしまい、大型犬の飼育を諦めている方が多いです。
それは小型犬を飼育されているみなさんから日頃からお聞きして感じてきました。
大型犬に魅力を感じているけれども飼育を諦めている方々の理由は、あながち間違いではありませんが、工夫ひとつでクリアできることがほとんどです。
昔も今も大型犬が大好きな方がいらっしゃいます。
時代が変わって流行り廃りを経験しても大型犬のことをずっと好きでいてくださる方々と大型犬との暮らしに夢を描いておられる方々のためにも今後も絶対に諦めないで世界中を探し回ってでも、大型犬をブリーディングし続けます。
スパニッシュマスチフとレオンベルガーの第一人者として。
これにはたくさんの要素があります。
欲張ればキリがないほどありますが、視覚的な要素は外せません。
愛される風貌は、同じ犬種であってもそれぞれに違います。
大型犬のスタンダードなサイズの範囲を重視し
ただ単に大きさだけを追求するのではなく、バランスの良い体躯の大型犬を作出しなければなりません。
また、気質も大切です。
これは先天的なものと後天的なものの要素があります。
先天的な要素とは血統です。ただし、両親犬と違う気質を持った子も育つことがあります。
先代や先々代そのまた先の血統から受け継がれた気質に思いを馳せて、
スペインという国や国民を知ることも大切です。
後天的な要素はしつけと飼育環境です。
みなさんが難しいと思われているところです。
しつけにおいて大切なのは「芸を教える」ことではありません。
信頼関係を作るためにしっかりとした主従関係を構築することが必要です。
決してプロにしかできないことではないです。
むしろ誰にでもできます。
それをおろそかにしては「散歩でリードを引っ張る」「甘噛みがひどい」「飛び付く」という問題はクリアできませんが、
逆にしっかりとした主従関係を構築する過程で、ほとんどの問題行動は自然になくなってしまうものです。
どこまで愛犬にとって良きリーダーとなるか。
そこを楽しめる心のゆとりを持って、大型犬たちと接して頂ければ嬉しいです。
ベストな組み合わせのオスとメスを交配するためには交配技術が必要です。
海外でも国内でもブリーダーの多くはメス犬を保体(ほてい)するときに
頭部を自分の方へ向けて(場合の寄って両足でメス犬を挟むため)お尻を向こうへ突き出すようにして、
オスを背中に乗せようとします。これはメスの保体を重視した交配方法であり、オス犬を上手に導けないことがあります。
また小型犬や小さめの中型犬ならこの方法でも交配は可能ですが、大型犬ではメス犬を保体できません。
弊舎では昔からメス犬の体の横から保体します。つまり、左手でメス犬の左前足を、右手でメス犬の陰部を持って
オス犬を導きます。
この方法だとオス犬を導きやすい上、どんなサイズの犬種でも交配できます。
オス犬とメス犬の身体の大きさが違う場合には持ち方(保体)を変えますが、
あくまでもメス犬の身体の横から保体します。
オス犬の交配練習は必要不可欠です。
ここにも技術と工夫があります。
オス犬が上手に交配できる子だと、メス犬は嫌がりません。
ですからメス犬が嫌がらないようなアプローチを教えます。
そして、短い時間で交配を終わらせることも大切です。
交配練習のためには発情中のメス犬が必要です。
そのメス犬は穏やかで交配や出産経験のある子が理想的です。
注意しなければならないのは、オス犬が上手にアプローチできないときに
メス犬を怒らせてしまうことです。
オス犬が萎縮しないようにしなければなりませんし、できるだけオス犬には自身を失くさないよう
褒めておだてて活発で前向きな状態を維持しなければなりません。
メス犬の陰部の状態が様々な点から良くても、稀にうまく自然交配できないことがあります。
だからといって仕方なくオス犬とメス犬任せにしていては交配できなくなります。
そういうときは人工授精します。
日頃から採精(オス犬から精子を採り出す)する習慣を付けておいて、
人工授精時に採精して、適切な方法で速やかに人工授精します。
メス犬のサイズにあった消毒済みのカテーテルを使って、オス犬の精子をメス犬に注ぎます。
交配のタイミングは実に様々です。
いくら交配技術が高くても、交配のタイミングはよくないと交配できなかったり、
交配しても着床しません。
メス犬の発情出血が始まった日から10日から15日後くらいが通常の交配適期ですが、
例外はたくさんあります。
7日後だったり、17日後であることもあります。
無出血発情もあります。
また出血を確認するためには、発情周期を知る必要があります。
これも様々です。
6ヶ月周期の子もあれば5ヶ月だったり8ヶ月だったり、4ヶ月周期の子もいます。
発情が来るであろう月の1ヶ月前から毎日2回、陰部をティッシュで拭いて、
出血の有無を確認し、おりものがないか、陰部の膨らみや色の変化も見ます。
これは2重チェックしています。
発情のたびに交配するブリーダーが多いですが、これではメス犬に大きな負担となります。
どの発情のときに交配するのか、発情の良し悪しを見極めて交配しなければなりません。
見極めるポイントはたくさんあります。
あらゆる点を鑑みて交配するか否かを決めます。
こうして交配を行い、良い血統を残し続けています。
(つわりや妊娠確認や出産前や新生児の世話や離乳食食べ始めた子犬の離乳食と検便などは
機会があれば日記でお知らせします)
大型犬をブリーディングして、大型犬を愛するみなさんに、その子犬をお引渡しすることが
一番の目的ではありません。
大型犬との暮らしそのものを楽しんで頂くことさえも2番目の目的です。
いかにその愛犬を通して、その存在感を心身ともに感じて頂けるか、
つまり、ここから巣立っていった家族にどれだけ大きな大きな良い影響を及ぼすのかが
最も大切だと考えています。
小型犬や中型犬にも同じことがいえますが、犬との暮らしの中では
楽しいことや困ったこともどちらもあるものです。
実はそういうものを経験すると人は成長する場面に出くわします。
ただし、前向きに愛犬と向き合わなければなりません。
多くのみなさんは前向きに、少しでも愛犬を慈しみ、心身ともに良い方向へ向かおうとされています。
それ自体が人を成長させています。
愛犬を擬人化する人もいるでしょうし、犬は犬と割り切る人もいるでしょう。
幼い頃から犬たちと接していると、このどちらの価値観を持ったとしても
情操教育として良い結果が表れるものです。
大型犬との暮らしを楽しんで、大型犬を慈しんで、私たちが人間的に成長しましょう。